焦げ付きや、こびり付きを防ぐ「テフロン加工のフライパン」は誰もが一度は耳にすることくらいあるのではないでしょうか?ここではテフロンコーティングについて紹介しています。フッ素樹脂コーティングとの違いやそもそもテフロン™とは何かということからわかりやすく解説します。
テフロン™とは1930年に米国デュポン社が発見したフッ素樹脂の一つPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)の登録商標名です(※)。一般の消費者にとっては、フッ素樹脂コーティングよりも、テフロン加工の方がなじみがあるかもしれません。
もともとテトラフルオロエチレンを用いた冷媒の研究をしていて見つかったのがPTFE。その時の冷媒がフロンだったことがテフロン™の語源と言われています。フッ素樹脂加工を行う会社は多くありますが、「テフロン™」の使用はデュポン社のライセンス契約が必要です。
(※)参照元:三井・ケマーズフロロプロダクツ公式サイトより(https://www.mc-fluoro.co.jp/special/history/)
様々なフッ素樹脂コーティングがあるなかの1つとしてテフロンというコーティングがあります。 テフロンとはフッ素樹脂コーティングそのものを示すものでもなく、フッ素樹脂コーティングとは別物でもなく、数多く存在するフッ素樹脂コーティングの中の1つのコーティングです。(右図参照※円の大きさや位置に特に意味はありません。)
デュポンという会社がフッ素樹脂を発見し、開発を続けてきた中で非常に優れた塗料は数多くありますが、その一つがテフロンです。また「テフロン」にはPTFE、PFA、FEP、1コート用塗料等々、何十種類ものテフロン塗料があります。ですの「テフロン」という名称だけではどのコーティングを指しているのか特定もできません。
テフロン™は名称を含めて使用する場合、ライセンス契約が必要になります。
デュポン社とライセンス契約はコーティングの技術レベルが一定以上ないとできません。その意味ではテフロン™は一定の水準以上のブランドと言えるかもしれません。
ただし「テフロンという商標で販売ができない」だけで、契約していない会社でも塗料は使うことができます。また塗膜として販売も可能です。ですので、現状、テフロンという商標をおおやけに使わずに、多くのコーティング会社(コーター)がテフロンの塗料を使用しています。
なおテフロンは海外の塗料です。そのため、テフロンの種類によっては、国内のフッ素樹脂と比べ、仕入れるのに時間がかかっってしまったり、発注を何か月も前に入れる必要があるなどのケースがあります。
フッ素樹脂コーティングの良し悪しは、使う側のニーズをコスト面、納期面(開発スピードなど)、品質面(特性)でどう要件を満たすことができるのかによります。ある用途においてはテフロンが適しているかもしれませんし、別の用途では適してないことがあり得ます。つまり使う側の使用用途とQCD(コスト、品質、納期)を全体的にとらえたなかで、最適な塗料を選定していくことが大切です。
なお、現在はフッ素樹脂コーティングについて、国内メーカーでの研究開発も進み、さまざまフッ素樹脂コーティングが日々用途に合わせて開発されています。多くのフッ素樹脂のなかから、ニーズに合ったものを選ぶ必要があります。
優れた特性を持つテフロンコーティングは、私たちの日常で使用する家庭用品分野から最先端の宇宙科学技術分野まで、様々な用途で用いられています。以下、テフロンコーティングの主な用途について、特性別に見てみましょう。
インクタンクの洗浄、各種金型の成型、ロール(テープ製造)の工程円滑化、攪拌羽根の洗浄などにおいて、テフロンコーティングの非粘着性などが役立っています。
ピストンリングの摩耗防止、シュート類の工程円滑化、カメラ部品の故障対策、コンベアーベルトの製品向上などに、テフロンコーティングの耐摩耗性・すべり特性などが役立っています。
遠心分離機や耐塩水装置、メッキ槽・メッキ治具、化学用タンク・配管などにおける薬液使用において、テフロンコーティングの耐蝕性や耐薬品性などが役立っています。
メッキ治具・メッキカゴ・フライヤー・電極部品などにおける不良・事故の防止、また攪拌羽根・粉体製造部品・液晶テーブル・ウエハーチャックなどにおける静電気帯電防止において、テフロンコーティングの電気特性が役立っています。
フッ素樹脂コーティング選定の難しいところは一般の方だけでなく、フッ素樹脂コーティングの専門家にとってもどれが最適なのかはやってみないとわからないことがあるということです。また2社以上に同時に開発を依頼して比較することも少ないと思われます。ニーズに合ったものを一緒に開発していく・見つけていくというパートナーシップが求められるという意味で、フッ素樹脂コーティングは、どの会社に依頼するかを選ぶこと自体が実はとても大切で難しいのです。
テフロンコーティング後の部品は、粘着性の高い物質と接したとしても付着しにくい、もしくは付着しないといった特性を持っています。
テフロンコーティングは、さまざまな樹脂の中でも熱に強く、-260度から+260度まで耐えられます。温度変化の激しい環境下で使用するものにコーティングしたい場合は、テフロンコーティングが適しています。
テフロンコーティングされた物質は、油や水と触れたとしても弾きます。そのため、フライパンにもテフロンコーティングが施されています。
さまざまな物が強い負荷をともなって擦れた場合、コーティングがはがれにくく滑りやすい特性を発揮します。摩擦力の少ない場所にも適しているのが、テフロンコーティングの特長です。
テフロンコーティングは、酸やアルカリ等の化学薬品に強く、腐食しにくい性質も持っています。化学薬品に浸かる、もしくは触れる可能性がある部品を製造している場合は、テフロンコーティングの検討も大切です。
テフロンコーティングは、絶縁性や耐アーク性の電気特性を持っています。そのため、各種電極や精密機器部品などの商品をコーティングするのに適しています。
PTFEは、耐熱性や非粘着性、低摩擦特性に強みを持つテフロンコーティングです。切断加工の必要な場面や滑りやすさを重視している場合に適しています。
PFAは、PTFEを改良したものです。耐熱性や非粘着性、低摩擦特性に加えてピンホール(小さな穴)の少ない連続皮膜を得られるのが特長です。また、PTFEより高い非粘着性を持っています。
FEPは、PFAと同じくPTFEを改良させたものですが、耐熱温度はやや低い200度程度です。高熱で焼いて性質を変化させることでピンホールの少ない被膜を得られます。
他の種類と比較すると耐熱性や非粘着性、低摩擦特性が弱いものの、耐摩耗性に優れ、防食用途にもよく使用されています。
テフロンコーティングの中には、高温型変成タイプや低温型変成タイプがあります。
高温型変成タイプは耐摩耗性の強いコーティング、低温型変成タイプは低温でも加工できるように調整されているのが特長です。
テフロンコーティングは、1度コーティングが施された部品に対して再度吹き付けられます。また、人体に毒性はありませんし、万が一体内に入ったとしてもそのまま排出されます。
テフロンコーティングそのものは、劣化しないという点も特長の1つです。ただし経年劣化により、皮膜より下の部材に水や薬品が浸透してしまう可能性があります。
また、吹き付け塗装なので、薄い部品に対して使用すると変形してしまう点に注意が必要です。
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全国のフッ素樹脂コーティング会社を調査し、上の選び方ポイントを踏まえたうえで、全国3拠点以上の事業所(従業員数80名以上)を保有し、またコスト品質納期(QCD)が厳しい自動車業界での実績があり、多種多様なフッ素樹脂コーティングを取り扱う会社3社をピックアップしました。(2021年5月時点調査)