新しい部品にフッ素樹脂コーティング(テフロン加工)を採用するときや、既存部品のコーティング仕様を見直すときは、いきなり量産を発注するのではなく、まず試作で仕上がりと性能を確かめるのが一般的です。
本記事では、フッ素樹脂コーティングの試作は1個から依頼できるのか、試作から量産までの流れについて、発注前の目線で解説します。
フッ素樹脂コーティングは、塗料の種類(PTFE・PFA・FEPなど)、膜厚、下地処理、焼成条件の組み合わせで性能が決まります。同じ「非粘着」が目的でも、付着させたくない物質や温度、摩耗の有無によって最適な仕様は変わるもの。試作は、机上で選んだ仕様が、自社の部品と使用環境で本当に機能するかを確かめる工程です。
| 確かめること | 内容 |
|---|---|
| 目的の機能が出るか | 非粘着・すべり・耐食・絶縁など、採用の目的とした効果が実部品で得られるかを確認します。 |
| 基材との相性 | 基材の材質や表面状態によって密着性が変わります。剥がれや浮きが起きないかを確認します。 |
| 焼成による影響 | 焼成は高温で行うため、薄板や溶接部品では変形・ひずみが出ないかを確認します。 |
| 寸法への影響 | 膜厚のぶん寸法が変わるため、はめあいや公差に収まるかを確認します。 |
| 耐久性 | 使用を続けたときに効果が持続するか、摩耗や薬品でどう劣化するかを確認します。 |
試作の段階でこれらを確認しておけば、量産に入ってから「思ったほど効果が出ない」「組み付けで干渉する」といった手戻りを防げます。
結論として、1個からの試作に対応しているフッ素樹脂コーティング会社はあります。試作品の製作を受け付けていることを公式サイトで明示している会社や、1個から量産まで対応すると案内している会社も見られます。
ただし、試作の費用は多くの会社で都度見積りです。フッ素樹脂コーティングは1個でも脱脂・下地処理・塗装・焼成といった工程を一通り経るため、量産時と比べると1個あたりの費用は割高になりやすい点は押さえておきましょう。また、個人からの依頼は受け付けていない会社もあるため、法人として依頼する前提で相談するのが基本です。
試作の進め方は会社によって異なりますが、おおむね次の流れで進みます。試作を一度で終わらせず、評価結果をもとに仕様を調整して再試作することも珍しくありません。
| ステップ | 内容 |
|---|---|
| ① 相談・ヒアリング | コーティングの目的、使用条件(温度・薬品・摩耗など)、求める品質、想定する数量、希望コストを伝えます。 |
| ② 仕様の提案 | ヒアリング内容をもとに、塗料の種類・膜厚・下地処理などの仕様が提案されます。候補が複数ある場合は、比較のために複数仕様で試作することもあります。 |
| ③ 試作加工 | 実部品、またはテストピースに試作仕様でコーティングします。 |
| ④ 評価 | コーティング会社側での初期評価(外観・膜厚・密着性など)と、発注側での評価試験・実機評価を行います。 |
| ⑤ 仕様の確定 | 評価結果をもとに仕様を確定します。目標に届かない場合は②〜④を繰り返します。 |
| ⑥ 量産 | 確定した仕様で量産加工に移行します。量産時の単価・納期・検査方法もこの段階で取り決めます。 |
評価の分担について、試作品の評価は、発注側が行う評価試験と同じ内容が社内で実施できる場合はコーティング会社側でも同じ評価を行い、実機評価や経時変化のように社内では分からない項目は、発注側の協力を得て評価試験を行うと案内している会社もあります。どこまでをコーティング会社が評価し、どこからを自社で評価するのかを最初に決めておくと、試作の進行がスムーズになります。
※参照元:フロロコート名古屋公式HP(https://www.fluorocoat-nagoya.co.jp/service_prototype.html)
試作期間は、仕様や評価内容によって変わります。初回依頼では試作と仕様確認の期間がリードタイムに加わるため、量産立ち上げ日から逆算して早めに相談しておきましょう。
試作品を受け取ったら、目的に応じて次のような項目を確認します。すべてを自社で評価する必要はなく、コーティング会社側で測定してもらえる項目もあります。依頼時に「どの項目を、どの基準で合格とするか」を伝えておくと、評価結果の受け渡しがスムーズです。
| 評価項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 外観 | ムラ、ブツ、ハジキ、色むらなど、塗膜の見た目に異常がないか。 |
| 膜厚 | 指定した膜厚の範囲に収まっているか。部位によるばらつきはないか。 |
| 密着性 | 基材から塗膜が剥がれないか。 |
| ピンホール | 耐食・絶縁目的の場合、塗膜を貫通する微小な穴がないか。 |
| 寸法・変形 | 焼成後のひずみや、膜厚による寸法変化が公差内に収まっているか。 |
| 機能評価 | 非粘着性、すべり性(摩擦)、撥水・撥油性、耐薬品性など、目的とする機能が得られているか。 |
| 実機評価・耐久性 | 実際の設備や製品に組み込んで使用したとき、効果がどれだけ持続するか。 |
コーティング会社のなかには、分析機器や評価装置を自社で備え、塗膜の観察や材料分析を行える会社もあります。たとえば、表面観察用のマイクロスコープや、赤外分光光度計(FT-IR)などの分析機器を研究部門に保有している例があります。評価を自社だけで行うのが難しい場合は、こうした体制を持つ会社に相談すると、原因の切り分けまで含めて進めやすくなります。
※参照元:日本フッソ工業公式HP(https://www.nipponfusso.co.jp/research/)
試作は、伝える情報が具体的なほど、最初の提案の精度が上がり、試作の回数を減らせます。問い合わせの前に、次の情報を整理しておきましょう。
自社の部品の材質がそもそもフッ素樹脂コーティングに対応できるかを先に確認したい場合は、対応材質のページもあわせてご覧ください。
試作で良い結果が出ても、量産で同じ品質が出なければ意味がありません。試作と量産で加工する設備や工程が変わると、膜厚や仕上がりに差が出ることがあります。試作の段階で「量産時はどの設備・工程で加工するのか」を確認しておくと、量産移行後の品質のぶれを防げます。試作から量産まで同じ会社で一貫して対応できると、試作で確認した条件をそのまま量産に引き継ぎやすくなります。
一般的な焼成型のフッ素樹脂コーティングは高温で焼成するため、耐熱性の低い基材や、樹脂・ゴムなどの付属品がついた部品は変形や変質のおそれがあります。付属品は事前に取り外すか、低温で処理できる仕様に対応しているかを相談しましょう。試作は、こうした焼成の影響を確かめる機会でもあります。
摩耗や経時変化など、短期間の試作評価では分からない項目もあります。評価が難しい項目は、加速試験で代替するのか、実機で一定期間使用して確認するのかを、コーティング会社と相談して決めておきましょう。
試作の段階では性能に目が向きがちですが、量産に移行するときには単価、納期、検査方法、検査成績書の有無も重要になります。試作の見積りとあわせて、量産時の条件の目安も聞いておくと、社内での採用判断がしやすくなります。
試作をスムーズに進め、量産まで安定して任せられるかどうかは、依頼先の体制によって変わります。相談先を比較する際は、次の点を確認しておくとよいでしょう。
| 確認ポイント | 理由 |
|---|---|
| 1個からの試作に対応しているか | 試作の最小数量や受付条件は会社によって異なります。 |
| 仕様の提案力があるか | 扱える塗料の種類が多い会社ほど、目的に合った仕様の候補を出してもらいやすくなります。 |
| 評価・分析の体制があるか | 社内で評価や分析ができる会社であれば、不具合の原因の切り分けまで相談できます。 |
| 試作から量産まで一貫して対応できるか | 試作で確認した条件を量産に引き継ぎやすく、仕様変更や品質のすり合わせもスムーズです。 |
| 自社と同じ業界での実績があるか | 業界ごとに求められる品質管理や評価の考え方が異なるため、実績のある会社は話が早く進みます。 |
| 対応できるサイズ・拠点 | 部品の大きさが焼成炉に収まるか、拠点が近く試作品のやり取りがしやすいかも確認します。 |
実際の加工実績から、自社の部品に近い事例を探したい方は、事例集も参考にしてください。
フッ素樹脂コーティングの試作は、1個から対応している会社もあり、本格採用の前に実部品で性能を確かめる重要な工程です。目的・使用条件・評価基準・量産時の想定を整理して相談すれば、試作の回数を抑え、量産へのスムーズな移行につながります。試作の段階から、量産時の設備・品質・供給体制まで見据えて依頼先を選ぶことが、失敗しない進め方です。
当メディアでは、対応力・実績をもとに厳選したフッ素樹脂コーティング会社を悩み別に紹介しています。試作の相談先を探している方は、あわせてご覧ください。
様々な機器や部品などに加工を施すことで、耐性を付与できるフッ素樹脂コーティング。耐性を持たせるのは性能を向上させるだけではなく、安全性に直結することも理由のひとつです。
どんな耐性を持たせたいか、どんな仕上がりを求めているのかによって加工メーカーをしっかり検討するようにしましょう。ここでは、お悩み別におすすめのフッ素樹脂コーティング加工メーカーをご紹介します。
引用元:フロロコート名古屋
https://www.landingpage-synergy.com/Y3dpVfRU/
鉄/SUS/ゴム/銅/真鍮/PPS/ガラス/FKM/CFRP/PEEKなど
引用元:吉田SKT
https://www.y-skt.co.jp/
※公式に基材情報なし、カタログをダウンロードしてご確認ください。
引用元:日本フッソ工業
https://www.nipponfusso.co.jp/
セラミック/CFRP/石英/鋼/鉄/鋳鉄など